こんにちは、ひかぱんです。
今回は、メカニカル式キーボードの老舗ブランドである、FILCOの「Majestouch(マジェスタッチ)」のベストバイを検証していきますね。あわせて、Majestouchの競合製品となるArchisite(アーキサイト、こちらも老舗)との詳しい比較も行います。

今回ご紹介するMajestouchは、数あるキーボード屋さんの中でも屈指の製品数を誇るメーカーなので、「どれを買うべきなのかサッパリ分からない!」という声を多く耳にします。この記事を読んでいただければ、必ず、ベストな一台に出会えるはずですよ。
なお、キーボードについては他にも書いていますので、あわせてお読みいただければ幸いです。
キーボードに関する記事
本記事の推定読了時間は6分です。「そんな長ったらしいレビューは読みたくねえっ」という方のために、先にベストバイだけネタバレしておきます。理由については後述のとおりです。
万人向けのベストバイ
ここがポイント 標準モデルのMajestouch2にBluetooth接続を搭載したコスパモデル。キースイッチはクセのない茶軸か赤軸がオススメです。 |
(2021.02.06現在)
【図解】1分でしっかり分かる!メカニカルキーボードの利点と特徴
個別製品の選び方を説明する前に、メカニカル方式の利点と特徴を図解付きで詳しく説明します。
メカニカル方式というと、打鍵時のカチカチ音の印象が強いのですが、実は価格と耐久性のバランスが良いのも大きな魅力です。
メカニカル方式の特徴
- 価格と耐久性のバランスが良い
- メカニカル方式ならではの打鍵感
- キースイッチごとに交換可能(手間と費用はそれなりにかかる)
図解1 キースイッチの価格と耐久性の比較 キーボードに1万円払うならメカニカル方式がベスト
キースイッチの方式による価格と耐久性の違いを下表にまとめました。なお、主にノートPCで使われるパンタグラフ方式は、メンブレン方式と特徴はほぼ同様です。
中間価格で高耐久!
静電容量無接点方式には1億回打鍵の耐久性を公言する製品もありますが、個人使用ではオーバースペックのため、必ずしもコスパは良くありません。メカニカル方式は、1万円前後で買える高品質キーボードと言えます。

図解2 メカニカルスイッチ8種早見表 基本となる茶軸と赤軸はほぼ全機種でラインナップ
お次は、メカニカル方式ならではの、キースイッチ(いわゆる◯軸)について図解します。キースイッチの選択肢が多いMajestouchをベースに説明しますが、Archisiteも同じキースイッチ(ドイツCHERRY社製)を使用しています。
迷ったら茶軸か赤軸を選ぶのが基本
キースイッチだけで8種類もあって悩みますが、Majestouch全製品で採用されている茶軸と、茶軸からクリック感を省いた赤軸が主流となっています。
茶軸よりクリック感(とカチカチ音)が欲しいなら青軸、赤軸より重めのキー荷重が好みなら黒軸を試すような選び方が良いと思います。Majestouchでは1製品(2SS Edition)にしか搭載されていませんが、わりと銀軸を愛好する人も多いようです。
CHERRY社って何?
CHERRY社は、メカニカル方式のキースイッチを製造するドイツのメーカーです。メカニカル方式のキーボードには、Majestouchのようにキースイッチを社外から調達する製品と、ロジクール製品のように自社独自のキースイッチを開発するものがあります。
【比較】マジェスタッチとアーキサイト製品からベストバイを選ぶ
さて、メカニカル方式の特徴をおさらいしたところで、万人向けのベストバイを選んでいきます。
早見表 Majestouchの製品ラインナップ とっても分かりやすい「4分類」で説明します
まずは、100種類を超えるMajestouchの製品ラインナップを早見表にしました。以下の4分類を頭に入れておくと、全体像をつかみやすいと思います。
Majestouchの4分類
- ノーマルタイプ(万人向け、おすすめ)
- 上級者向け(キートップ無刻印、高速キー)
- 60%キーボード(Fnキー無し)
- 個性派デザイン(迷彩色、スカル柄)
なお、東プレRealforceやHHKBと異なり、Majestouchには機能全部入りの「上位製品」がありません。

ノーマルタイプ(万人向け) ここから選べば間違いない定番製品
まずは、Majestouchシリーズの中で、クセのない定番製品からご紹介します。万人向けの製品なので、ここから選べば間違いありません。
製品名 | 接続方法 | 本体色 | キースイッチ | キー配列 |
Majestouch 2 Hakua | 有線接続 USB,PS/2 | 白 | 茶 黒 青 赤 静 | 日本語(かな有) 英語 |
Majestouch 2 | 黒 | 茶 黒 青 赤 静 | ||
Majestouch 2S | 茶 黒 青 赤 静 | |||
Majestouch Convertible 2 | 有線/無線 USB,BT | 茶 黒 青 赤 静 | ||
Majestouch Convertible 2 Hakua | 白 | 日本語(かな有) |
上の表を見て、「わざわざ製品名を分ける必要ある?」と気づいたなら鋭い。本体色の違いだけで製品名を変えるところが、Majestouchの選びにくさの理由の一つと言えましょう。
2千円程度の価格差でコスパの高い無線モデルがお勧め
Majestouchのベストバイ選びは悩ましいのですが、有線モデルとの価格差が2千円程度とコスパが高いことから、無線モデルの「Majestouch Convertible 2」をお勧めします。ちなみに、静電容量無接点方式のRealforceやHHKBと違い、静音キー搭載機がほぼ同価格で買えるのもMajestouchの魅力です。
これがイチ押し!
ここがポイント 標準モデルのMajestouch2にBluetooth接続を搭載したコスパモデル。キースイッチはクセのない茶軸か赤軸がオススメです。 |
(2021.02.06現在)
また、キースイッチもいろいろあって悩みますが、主流である茶軸か赤軸をベースに選ぶのが基本です。キースイッチの違いについては、図解をまじえて後述します。

上級者向け(キートップ無刻印、高速キー)
以下の4製品は、上級者向けのモデルとなります。明確な理由無しに選ぶと、単に扱いづらいだけなのでご注意を。
製品名 | 接続方法・本体色 | キースイッチ | キー配列 | 刻字位置 |
Majestouch 2SS Edition | 有線接続 USB,PS/2 | 銀軸 (Speed Silver軸) | 日本語(かな無) 英語 | キートップ |
Majestouch Stingray | LP速軸 (LP Speed軸) | 日本語(かな無) | キートップ フロント(*1のみ) | |
(LP赤軸) LP Red軸 | 日本語(かな無)*1 日本語(かな有) 英語*1 | |||
Majestouch Black | 茶 黒 青 赤 | 日本語(かな無) | フロント | |
Majestouch Ninja | 茶 黒 青 赤 | 英語 |
無刻印より扱いやすいフロント刻字モデル
「HHKBの無刻印に憧れるけどハードルが高い」という人にも扱いやすいのがフロント刻字。キーキャップの前面に刻字されているので、真上からは無刻印に見えるという技ありのデザインです。
パッと見では無刻印!
Majestouch 2SSとStingrayは高速打鍵が可能
Majestouch 2SS EditionとStingrayでは、キーストロークの浅いLP(Low Profile)軸が採用されています。特に、LP Speed軸では、茶軸などの一般的なメカニカルキーよりキー判定が1mmほど短いため、さらに高速入力が可能な仕組みです。ただし、高速キースイッチは誤入力の原因にもなるので要注意。
LP Speed軸(高速) | 茶軸(標準) |
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Stingrayは外観美と実用性を両立した薄型設計
Majestouch Stingrayは薄型のキースイッチ(LP軸)を使用しているため、他のMajestouch製品よりも全高が薄く作られています。
ボディ部分で5mm薄い | 低重心でシャープな外観 |
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また、FILCOさんに教えていただいた話では、LP軸と階段状のステップスカルプチャー構造を両立している製品は数少ないそうで、外観へのこだわりを感じます。

60%キーボード(Fキー無し) HHKBのほぼ半値というコスパの良さ
以下の3製品は、Fキーの無いキーボードです。HHKBでお馴染みですが、最近では「60%キーボード」と呼ばれ人気です。
製品名 | 接続方法 | 本体色 | キースイッチ | キー配列 |
Majestouch MINILA | USB,PS/2 | 黒 | 茶 黒 青 赤 静 | 日本語(かな無) 英語 |
Majestouch MINILA Air | BT | 茶 黒 青 赤 静 | ||
Majestouch MINILA-R Convertible | USB,BT | 黒,グレー, あさぎ色 | 茶 黒 青 赤 静 *黒軸は英語配列のみ |
無線接続のみ対応で扱いづらかった「MINILA Air」ですが、有線接続モデルの「MINILA」と統合され、有線・無線両対応の「MINILA-R Convertible」が発売されました。MINILA-Rはキーキャップが2色成形で高級感もあります。
HHKBのほぼ半値!
ここがポイント Fキーの無い60%キーボード。標準で全角/半角キーが付いているので、HHKBより扱いやすいのが魅力。 |
(2021.02.05現在)
個性派デザイン(柄物、金属素材)
以下の3製品は、ある意味でMajestouchらしい、柄物や金属素材のキーボードです。ちなみに、FILCO公式の「キーボード工房」では、本体色を純金箔貼りなどにカスタマイズが可能です。
製品名 | 接続方法 | 本体色 | キースイッチ | キー配列 |
Majestouch LumiS | USB,PS/2 | 蛍光スカル柄 | 茶 黒 青 赤 静 *黒軸は英語配列のみ | 日本語(かな無) 英語 |
Majestouch 2 Camouflage-R | 迷彩柄 | 茶 黒 青 赤 静 | ||
Majestouch 2S Metal SUS | 金属製 | 茶 黒 青 赤 銀 *青軸は英語配列のみ |
Majestouch 2S Metal SUSは2005年販売モデルの復刻版で、実勢価格3万9,600円という高級品です。こちらはベースモデルが2種類あり、茶軸・青軸・赤軸はLumiSがベース、銀軸はMajestouch 2SSがベースとなっています。ベースモデルの違いにより、キー色とLED色が異なります。
また、FILCOさんに教えていただいた話によると、Majestouch LumiSのファームウェアは前出のStingrayと同じもので、「USB接続時でも全キー同時押しが可能」などの共通点があります。一方、Camouflage-Rはベストバイに推したConvertible2に近いファームウェアを使っているそうです。
比較表 無線接続が不要ならArchisiteがおすすめ 細かい部分でMajestouch以上に「コナレ感」がある
ここまでFILCO社のMajestouchを中心に記述してきましたが、同じく老舗のArchisite(アーキサイト)も良い製品を出しています。

Archisiteの製品ラインナップを下表にまとめました。
Progres Touch Retro | Maestro | Quattro | |
キースイッチ | 茶 黒 青 赤 静 銀 *黒軸,銀軸はTKL,TINYのみ | 茶 黒 青 赤 静 銀 透 | 茶 青 赤 静 |
フルキーボード | Progres Touch Retro | Maestro FL | なし |
10キーレス | Progres Touch Retro TKL | Maestro 2S | Quattro TKL |
コンパクト | Progres Touch Retro TINY | なし | なし |
主な特徴 | ベースモデル。ファームウェア更新可、DIPスイッチ、USB接続でもNキーロールオーバー。ケーブル着脱可。 | Progres Touch Retroの上位バージョン。ロープロファイル(背の低い)キーキャップ、LEDサインの充実など。 | Maestroをベースに、Thinkpadと同じく静電容量式で耐久性の高いポインティングデバイス付き。 |
価格帯 | 10,000円 | 14,000円 | 17,000円 |
Majestouchの競合機 | Majestouch 2 | Majestouch Stingray | なし |
Archisiteはベースモデルの機能が優秀
ご覧のとおり、価格的には完全にMajestouchと競合しているわけですが、Majestouchには一部機種でしか対応していない機能がベースモデルのProgres Touch Retroに標準搭載されています。しかも、この価格帯の有線接続モデルでは非常に珍しく、ケーブルが着脱可能となっており、ケーブルの劣化を心配せずに使えます。
メンテナンスのしやすさもGood
また、細かいところですが、スペースキー内部の構造もMajestouchとは大きく異なっており、メンテナンスしやすいのも特徴です。具体的には、Majestouchのスペースキー内部には、打鍵時にキーを安定させるための「スタビライザー」という金具が入っていますが、キーキャップを外すときにスタビライザー周りを破損するとメーカー修理になります。
Archisite | Majestouch |
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Archisite製品のベストバイについては、上記のとおりベースモデルのProgres Touch Retroのコスパが際立って優秀です。また、こちらの製品のみ、キーキャップが往年の2色成形(金太郎飴の構造)になっており、キートップの文字が消えないのも特徴です。
ベストバイ!
アーキサイト 2016-11-24T00:00:01Z
【詳しく】マジェスタッチとアーキサイトの機能や特徴を解説
その他、これまでの説明で触れてきた専門用語について補足します。
Nキーロールオーバー 厳密には「同時押し」とは意味が違います
「Nキーロールオーバー」とは、(他のキーを押したままでも)最後に押したキーが認識される仕組みです。早打ちが必要なタイピストやゲーマーには必須の機能で、同価格帯のキーボードにはまず搭載されています。
ちなみに、USB接続の場合、PCには「直近6キーより前のキーは順に離されている」と認識されるため、同時押しという意味では6キーが上限です。これは、USB機器のデータ転送量(1度に8byteまで)による制限で、このため厳密には「Nキーロールオーバー」と「同時押し」は意味が異なります。一方、PS/2接続の場合は6キー制限が無いため、有線接続モデルに付属のPS/2変換アダプタを使うことにより、全キー同時押しが可能です。なお、Majestouch 2SS Edition、Stingray、LumiSの3機種では、USB接続でも全キー同時押が可能です。
7キー以上の「同時押し」が必要なら
Microsoftのゲーミングキーボード「SideWinder」では、PCに2つのキーボードデバイスとして認識させることで、「26キー同時押し」が可能です。また、PS/2接続には8バイト制限が無いため、理論上は全キー同時押しが可能です。
キースイッチの交換 キースイッチのみ購入できるので修理も可能
FILCOの公式オンラインショップでは、50個単位でキースイッチを販売しています。
メカニカル方式の特徴として、キースイッチは個別に交換が可能です。半田付けなど決してお手軽な作業ではありませんが、キースイッチの故障時に自分で修理することも可能です。
Majestouchについては以上となります。