今回は、無線LAN親機の主要メーカー6社(全51製品)から、ベストバイを検証していきますね。
無線LANルーターは、家庭内の通信環境全般を左右する、ネット時代の必需品です。しかも、一度買ったら数年は買い替えない長寿命アイテムにもかかわらず、「なんとなく広告の品を買ってしまった」という声も耳にします。この記事を読んでいただければ、必ず、あなたのベストバイに出会えるハズですよ。
本記事の推定読了時間は5分です。「そんな長ったらしいレビューは読みたくねえっ」という方は、目次から文末にぶっ飛んでしまってくださいね(滝汗
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なお、いま流行りの「メッシュWifi」とは、電波の「死角」をカバーするための製品です。自宅2階・3階やお風呂場など、電波の届きづらいエリアの通信環境改善にいかがでしょうか。
無線LANルーター選びの「知るべきスペック」
無線LANルーターを選ぶときの問題として、「スペック表の見方がよく分からない」という声をよく耳にします。ここでは全製品に共通の主要スペックについて説明を加えます。
Wifi規格と通信速度
無線LANルーターを購入する際、最も気になるのが通信速度だと思います。まずは下の表をご覧ください。Wifi規格別の通信速度を一覧にまとめてみました。
通信速度は11acで頭打ち
規格名 | 周波数帯 | 理論速度 | 特徴 |
11a | 5GHz | 54Mbps | 障害物に弱いが、電波干渉は少ない |
11b | 2.4GHz | 11Mbps | 障害物に強いが、機器間で電波干渉しやすい |
11g | 2.4.GHz | 54Mbps | 11bの5倍の通信速度(理論値) |
11n(Wifi4) | 2.4GHz, 5GHz | 600Mbps | 11gの11倍の通信速度(理論値) |
11ac(Wifi5) | 5GHz | 6900Mbps | 11nの11倍の通信速度で、現在の主流はコレ |
11ad | 60GHz | 6800Mbps | 直進性の高い電波で、狭い範囲で有効 |
11ax(Wifi6) | 2.4GHz, 5GHz | 9600Mbps | 最新規格。同一室内なら下り700Mbps超え |
家庭用Wifiの通信速度は、現行規格の11ac(Wifi5)まで、飛躍的に向上してきました。わたしが初めて無線LANルーターを購入したときの規格が11gだったので、単純計算で121倍も通信速度がアップしたことになります。
しかし、次世代規格の11ax(Wifi6)では、理論値ベースで約1.4倍の速度向上にとどまり、家庭用Wifiの通信速度はほぼ頭打ちという状況です。5G世代のモバイルデータ通信は、LTE世代の100倍の通信速度(20Gbps)となるため、家庭用Wifiに速さを求める時代は終わったとも言えます。
通信経路(バンド数)
通信速度に代わって、無線LANルーターのスペックで重要なのが「バンド数」です。
バンド数とは同時接続可能な通信経路のことで、現在の主流は「デュアルバンド(2バンド)」。さらに、上位機種では「トライバンド(3バンド)」まで商品化されています。
トライバンド対応製品では、汎用性の高い11n(Wifi4)と高速データ通信が可能な11ac(Wifi5)を組み合わせることで、4K動画のストリーミング再生などハイエンドなWifi活用が可能です。
HuluやDAZNの遅延を減らすには
HuluやDAZNなどのネット動画ユーザーには、トライバンド対応の無線LAN親機を推奨します。高速データ通信が可能な11ac(Wifi5)に接続することで、動画遅延の改善が期待できます。
アンテナ(ストリーム数)
最近の無線LAN親機のパッケージには、下のような表示がよく見られます。
この中で「4×4」の部分がアンテナ数であり、「ストリーム」とも呼ばれます。上で説明した「バンド数」と紛らわしいですが、全くの別モノですのでご注意ください。
この数字の意味するところは、送信側と受信側のアンテナ数(ストリーム)を表しています。「4×4」と表記された場合、送受信に各4本ずつのアンテナがあり、「4ストリーム」と呼ばれます。
通信速度=ストリーム数×433Mbps
ここで大切なのが、無線LANの通信速度はストリーム数に比例するということです。
どういうことかと言うと、無線LAN親機のアンテナは、1本1本が単独で動作するだけでなく、アンテナを束ねて通信速度を上げる仕組みになっているためです。
たとえば、現在主流の11ac(Wifi5)の場合、1ストリーム増えるごとに、433Mbpsずつ通信速度がアップします。最大速度でWifiを使用したい場合、迷わず4ストリーム製品を選びましょう。
最大速度で使うなら4ストリーム!
4ストリーム=1733Mbps
3ストリーム=1300Mbps
2ストリーム=866Mbps
1ストリーム=433Mbps
使用人数=ストリーム数×2人
さらに、もう一つ大切なのが使用人数の問題です。家族で無線LANを使用する場合には、「利用人数=ストリーム数×2」を目安としてください。
たとえば、4ストリームの無線LAN親機の場合、家族8人までスムーズにWifiを利用できるということになります。ちなみに、この数式は、1人あたり3端末以内という前提での使用人数です。
無線LANルーターは一度購入すれば長く使える製品ですが、わたしたちの家族構成は変わり続けます。結婚や子供の成長など、ライフサイクルにあわせて、スペックの見直しが必要です。
家庭内でも同時接続が当たり前
10年前の家庭用Wifiは、パソコン好きなお父さんが使うものでした。しかし、今は違います。家族が1人1台スマホを持ち、Amazon Echoやロボット掃除機などの家庭用電子機器、さらには携帯用ゲーム機などが、常にWifi接続されている時代です。
セキュリティ ~まもなくWPA3がやってくる~
無線LANルーターのセキュリティ設定は、「WPA2-PSK-AES」に設定しておけばOKです。
無線LANのセキュリティについては、下記リンクにまとめました。「AES>TKIP>WEPは知ってるけど、それとWPA2の関係が分からないんだ凹」という方には、スッキリ理解できる内容に仕上がっていると思います。よろしければ御覧ください。
【これで解決】Wifi-無線LANセキュリティ設定の違いがスッキリわかるゾ – ねかつちう。
こんにちは、ちうぱんです。 すでに多くの家庭で普及している無線LANルーターですが、セキュリティ項目をデフォルト設定のまま使用している方も多いと思います。 とはいえ、「AESって何?TKIPって何?」とか「ゲーム機はWEPのみ対応だっけ?」という疑問もありますよね? そこで本記事では、「知りたいこと」がスッキリ分かるように、無線LANセキュリティの違いと、オススメ設定をまとめてまいります。 1. SSIDと暗号化キー SSIDと暗号化キーがセキュリティの基本 公衆無線LANは「ニセAP」に注意 最新の無線LANルーターは安全性+α 2. データの暗号化 セキュリティ規格(世代) 暗号化方式 「…
家庭用Wifiのセキュリティ設定は、接続機器によって使い分けるものではありません。そういう時代は遠い昔に終焉しました。セキュリティ設定は常に最新規格を使用してください。
ちなみに、無線LANセキュリティの最新規格「WPA3」が2018年6月に策定されました。ファームウェアの更新で対応できるため、国内メーカーも法人向け機器から対応を進めています。遅くとも2020年までには家庭用製品も対応するので、アップデート情報にご注意ください。
個別製品の特徴と比較
ここからは、個別製品の特徴などを比較しつつ、ベストバイを検討していきたいと思います。
家庭用無線LANルーターには、圧倒的な低価格帯というクラスが無いため、ハイエンド製品と普及価格帯のミドルクラスに大別したいと思います。
ミドルクラス製品
まずは実売価格が1万円前後のミドルクラス製品からいきましょう。
この価格帯では最大手のバッファローが市場シェアの約半分を握り、その残りをNECとIOデータが二分しているという状況です。最近ではエレコムがじわじわとシェアを拡大しています。
ミドルクラス無線LANルーター選びの3条件
- 4ストリーム
- MU-MIMO
- ハイスピードCPU
すでに書いたように、「4ストリーム」は理論値上の最高速度を得るための最低条件となります。製品パッケージに「4×4」あるいは、速度表示が「1733Mbps」となっていれば4ストリームです。
また、「MU-MIMO」は、実効速度に大きく影響するポイントです。ミドルクラス製品ではMU-MIMO非搭載の機種も多いため、見落とさないようにご注意ください。CPUについてはスペック表に表示の無い場合も多いですが、CPUにより実効速度に数十%の違いが生じるケースもあります。
MU-MIMOって何?
「MU-MIMO」とは、送受信の「順番待ち」を減らすための技術です。従来の無線LANは電波干渉を防ぐため、親機と子機が1対1でデータを送受信する(他の子機は待機する)のが基本でした。この待ち時間が減少するため、実効速度の改善が期待できます。
上記の3条件を満たす製品として、バッファローの「WSR-2533DHP2」をベストバイに指名します。こちら、家電批評2018年9月号でもベストバイを受賞しており、家屋内での速度検証においても優秀な結果を残しています。記事執筆時点の実勢価格も9,870円と手頃な価格であり、コストパフォーマンスにも優れています。
スペックが競合する他社製品を調査してみたところでは、CPUスペック(デュアルコア1.35GHz)を公開しているのは本製品のみでした。CPUの改善により、型番違いの旧モデルより、スループットが50%以上も改善しています。
なお、似た型番で「WSR-A2533DHP2」というAmazon限定もでるもあり、通常モデルとの違いは「バンドステアリングlite」機能が付いていることです。2.4GHzと5GHzのどちらか強い電波を自動選択するというものですが、あまりメーカー推しの機能という印象は持ちません。
バッファロー「WSR-2533DHP2」の競合製品は以下のとおりです。ミドルクラス製品を購入する場合、基本的にこれらの製品の中から比較検討することになるでしょう。
メーカー | バッファロー | NEC | IOデータ | エレコム |
製品名 | WSR-2533DHP2 | WG2600HP3 | WN-AX2033GR2 | WRC-2533GST2 |
Wifi規格 | 11ac(Wifi5) | ← | ← | ← |
バンド数 | デュアル | ← | ← | ← |
ストリーム数 | 4 | ← | ← | ← |
MU-MIMO | ○ | ← | ← | ← |
CPU | 1.35GHzデュアルコア | 不明 | 不明 | デュアルコア |
ビームフォーミング | ○ | △(旧式) | ○ | ○ |
接続台数 | 18台 | 18台 | 16台 | 24台 |
特徴 | 使用者が多いので、トラブル発生時の自力解決も安心。AOSS対応製品が多いのも魅力。 | ビームフォーミングが他社より劣る(受信側端末が非対応だと使えない) | 最低スペックは押さえているので、価格次第で選ぶのもアリ。 | トレンドマイクロのセキュリティ機能搭載。PC・スマホ以外も驚異から守る。 |
ご覧のとおり、Wifi規格、バンド数、ストリーム数、MU-MIMOは共通ですが、それ以外のスペックはバラツキがあります。NECだけビームフォーミングが旧式なのでご注意ください。
その他、IPv6(フレッツ光の次世代通信規格)への対応、他社親機からの簡単乗り換え機能、ペアレンタルコントロールなど、細々とした機能はだいたい同じです。
セカンドバイ
セカンドバイとしては、エレコムの「WRC-2533GST2」を推します。トレンドマイクロのセキュリティ機能を搭載しており、お買い得感のある仕様となっています。家電批評2018年9月号では、一人暮らし向けのベストバイ評価を受賞している機種です。
ハイエンド製品
続いて、ハイエンド製品の検証に移ります。無線LANルーターに4万円以上も出費できるギーク(卓越者)のための選択肢がこちらです。
最新規格11ax対応製品
現時点で最高スペックと言えるのが、2018年12月に発売されたばかりのASUS「RT-AX88U」です。製品外観からもゲーミング用途であることは明らかですね。スペックとしては、最新規格11ax(Wifi6)に対応したデュアルバンド、4ストリーム、最大速度は驚異の4800Mbpsとなります。
11ax(Wifi6)世代の無線LANルーターでは、前世代(11ac)で導入されたMU-MIMOに加え、「OFDMA」技術により複数子機への同時通信性能が強化されています。簡単に説明すると、無線LANでは電波干渉を防ぐため、親機と子機の1対1通信が基本であったところ、そのような「順番待ち」を解消する技術が進化したということになります。
さらに、このクラスになると、「1.8GHzクアッドコアCPU」を搭載しています。無線LANルーターは複数の接続子機と絶え間なく電波制御を行っているため、CPU性能により実効速度は大きく変わります。
メーカー | ASUS | Netgear | Netgear | ASUS |
製品名 | RT-AX88U | Nighthwak-AX8 | NighthawkX10-R9000 | GT-AC5300 |
Wifi規格 | 11ax(Wifi6) | 11ax(Wifi6) | 11ad | 11ac(Wifi5) |
バンド数 | デュアル | デュアル | トライ | トライ |
ストリーム数 | 4 | 4 | 4 | 4 |
CPU | 1.8GHzクアッド | 1.8GHzクアッド | 1.7GHzクアッド | 1.8GHzクアッド |
特徴 | 11ax(Wifi6)対応で、現時点での最高スペック。Nighthawk-AX8より有線LANポートが多い。 | 基本スペックは左と同じ。クセのある外観と、固定アンテナは、好みの分かれるところか。 | Wifi6とWifi5の中間規格となる珍しい11ad対応製品。価格的な妙味は無く、薦めづらい。 | 家電批評2018年9月号のベストバイだが、この価格帯で旧規格はさすがに厳しい。 |
残念ながら11ax(Wifi6)に対応した子機がほぼ存在しませんが、11ac(Wifi5)や11n(Wifi4)との下位互換性があるため、既存環境でも2割程度の高速化が可能です。
ただし、このクラスの製品になると、むしろフレッツなど根本の光回線がボトルネックとなるため、かつて11g世代から11n対応製品に買い替えたときのような、劇的速度アップとはなりません。つまり、「コストパフォーマンスは落ちてきている」ということでもあります。
ちなみに。最新規格11ax対応で、しかもトライバンド搭載の最強ゲーミングルーター「GT-AX11000」が日本でも間もなく発売されそうです!米国Amazonでは449ドルで販売されているようなので、日本お目見え価格は5.9万円くらいでしょうか?個人輸入して使いたいくらいですが、国内使用には技適が必要なので断念です。
無線LANカード
デスクトップPCの需要が下火になってしまったため、無線LANカードの選択肢は多くありません。
その中で、ハイエンドクラスでは唯一の無線LANカードが、Asusの「PCE-AC88」です。こちら、4ストリームの外出しアンテナが付属し、通信速度は2167Mbpsと最強です。
Asustek 2017-01-14T00:00:01Z
Amazonのレビューによれば、実測でも下り300Mbps前後を叩き出しているようなので、普通に有線LANより速いですね。ちなみに、拙宅のフレッツ光+有線LANでは、130Mbpsあたりが限界です。
2019年ベストバイ及びセカンドバイ
ここまで長文にお付き合いいただき、ありがとうございます。本記事の結論として、ベストバイとセカンドバイを選出していきます。
ベストバイ
ミドルクラス製品のベストバイには、バッファローの「WSR-2533DHP2」を推奨します。
こちら、ミドルクラス無線LANルーターの必須条件である「4ストリーム」と「MU-MIMO」を搭載し、競合製品の中で唯一、CPUスペック(1.35GHzデュアルコア)を公表しています。家電批評2018年9月号でも、家屋内での速度検証を踏まえたベストバイを受賞しています。
無線LANルーターは同一価格帯においてスペック差がほとんど無いため、市場シェアの約半分を占めるバッファロー製品を選んでおけば、トラブル時の自力解決にも安心です。
セカンドバイ
さらに、セカンドバイとして、エレコムの「WRC-2533GST2」を選出しました。こちらは、トレンドマイクロのセキュリティ機能を搭載し、AV機器やゲームなど、セキュリティ対策ソフトをインストールできない無線LAN子機を脅威から守るのが強みです。
価格的にはベストバイにあげたバッファロー製品より高価です。しかし、同一価格帯におけるスペック差の少ない無線LANルーター製品において、積極的な「差別化戦略」は歓迎したいところです。
ハイスペックなら
最後に、ギーク(卓越者)のためのハイエンド製品では、Asusの「RT-AX88U」をベストバイに選出します。記事執筆時点の実勢価格は47,180円と、まさに機能なりの高価格となっています。
その高価格にふさわしく、最新Wifi規格の11ax(Wifi6)により理論値速度は旧規格の1.4倍、さらに、こちらも新技術「OFDMA」技術による順番待ち回避性能の向上、加えて、1.8GHzクアッドコアCPUが実効速度を底上げします。まさに「全部入り」大好きな人のための製品です(汗
それでは、来シーズンも無線LANルーターのさらなる発展と低価格化が実現されるよう祈りつつ、今回は以上っ!